第58話    「釣りはいつも危険と隣り合わせ」   平成17年05月15日  

釣と危険は常に隣り合わせだとは、以前から何かにつけて書いてきた積りである。衣服を着けたままでの、海への転落事故では余程のベテランでも泳ぐ事など中々出来るものではない。

つい最近酒田北港の離岸提にて釣り人がテトラから転落し亡くなったと云う悲しい知らせがあった。
55日午前345分頃にボートで海に出ていた酒田市内の男性から男性が一名海に転落しているとの通報が119番に入った。そして8時間後に、その男性は海底のテトラポットに挟まった形で発見されたが、ついに死亡していたとの事。死亡したのは山形市のIさん40歳である。働き盛りの人が何故・・・・?と考える時、直ぐにライフジャケットを着けてなかったのではないかと思った。着けていれば助かる率は大幅にアップする。ライフジャケットの紐が邪魔なのか、股紐を通さずに釣りをしている人たちを多く見かける。又通していても、ゆるくしていて何の為のジャケットか分からぬ人も多い。ライフジャケットはただ着けおけば、助かるものではない。正しい着用して初めて助かる率がアップすると云うものなのだ。悪条件が重なる時もあり、着用していても助かる率100%ではないと云う事もしっかりと覚えておかねばならない。ライフジャケットは単なるお守りではないと云う事を釣り人は認識しておかなければならないのだ。新聞によれば、その日は波も無く穏やか、視界は良好であったそうだ。では、何故・・・・?

電話での通報が345分だったというから、落ちたのはそれ以前だった事になる。ライフジャケットを邪魔で外したか、股の紐を正しく装着しなかったが為に落ちた時にライフジャケットが外れたかどちらかである。しばらくはテトラにつかまって助けを求めていたらしい。とかく何回か同じ場所で釣っていると、人は大抵馴れが生じて危険を危険と思わなくなる事がある。人間誰しもが最初の数回は気を付けてはいるものの、回を重ねるに従って自分は大丈夫だとついつい自信過剰となり、事故が起きることが極めて大となる。事故なんて大抵そんなものだ。今までが大丈夫だから、今日も大丈夫とは限らないと云う事をしっかりと認識すべきである。その日の気象、体調、釣り場の条件(夜露で滑りやすくなっているかも知れぬ)等々。

JR
福知山線の脱線事故(死亡107)なども上から下までもすべて馴れで、今まで事故が無かったからと云うだけで、同路線で停車駅がひとつ増えたのに関わらず区間所要時間が同じとは・・・?超々過密ダイヤの採用は同じ区間を走っている同業他社の私鉄に打ち勝つために採られた営業方針であった。公益第一(安全運行を含めると思いたい)とは口で云いながら、実質は利益最優先の会社であった。今まで事故が無かったから、安全対策も採らずそれで良いのだと云う考え。これでは車両の運転士は遅れを取り戻す為に、多少の危険を承知の上で日常的にスピードを出さざるを得ない。会社の制裁(日勤教育と云う名を借りた個人的ないじめ)が怖いからだ。今回事故が起きて初めて、その実体が明らかになった。これではこれまで事故が、無かったのがおかしい。それでも事故が起きなかったとすれば、正に神業の電車の運転士たちによって、これからも過酷な運転が続けられていたことは間違いの無いことである。会社側の今まで大事故が起きなかったからと云う馴れと今まで何とかなってきたからと云う運転士の馴れが重大事故を引き起こしたと云う事になる。これでは会社から命令されて車両を運転して来た運転士たちは被害者の一人であり彼らも可哀相だ。ましてそんな難しい区間に経験の浅い運転士を持って来るとは、乗務の割り振り方もおかしいのではないか。JR西日本の役員一同、又会社の管理職一同が、正に馴れ(今まで事故らなかったと云う)で会社の人命軽視、利益誘導、社命優先の経営をやって来た事になる。その結果、会社発足以来過去最高の利益が、生じたとするならばその責任は更に重くなる。JR東日本、東海等と比べても安全対策のなされ方が、極端に少ない事も今回の調査で明らかになった。昨日まで比較的大きな事故が無かったから、このままで良いとは云う事には決してならない。人の命を預かる会社として、安全対策をそっちのけで、利益誘導型の政策を取った役員らの経営陣は責められねばならない。そんな経営をしてまで役員報酬はともかくとして役員賞与(今回は辞退したようだが)を貰う役員の顔が見たいものである。107名の死亡と云う大事故があってから、いくら頭を下げても済むものではない。同じ経営陣では、これから色々な安全対策をやると云っても、それを心から信じる人などは少ないではないか。下からの意見がまったく通らない、上下関係も問題である。社員が云いたい事が云えると云う、適度な風通しの良い上下関係があったならこんな事にはならなかったであろう。以前の国鉄労働組合見たいな過激すぎるのも考え物であるが、自分たちの要求ばかりではなく、安全に対しても断固筋を通すような組合の設立があってもしかるべきではなかったかと思える。

話は脱線してしまった。
いけしゅさんからの報告によれば、自転車&釣り.COMHPの管理者の方で釣のベテランだったらしい。内容を見ると釣りとサイクリングを楽しんでいらした方のようである。私もその人のHPを何度か見た記憶があり、直ぐに分かった。

どちらかと云うとブッコミや投げサビキの釣が好きな方だったようで、北港の離岸提には度々訪れていたようだ。亡くなった人を悪く云う積りは無いが、何度も訪れている離岸提の慣れているテトラだけに慣れが、事故を招いたのではないかと考えている。曲がりから南に何百mかにあるあの場所には高いテトラが敷き詰めてあり、無数の大きな穴が口を開けておりとても危険なところだ。そんな場所にたった一人で、しかも真夜中から釣に行く事は控えなければならない場所である。夜間の釣では数人で行ったとしても危険であるから、必ず声を掛け合う。いくら慣れているからと云っても、自分は大丈夫ではないのである。ひとつ間違えれば命に関わることの重大性をもっともっと認識してしかるべきであつた。親兄弟それに妻子も居ただろう。40歳と云う分別盛りの人の行動とは思えない。転落事故そのものは自己責任とは云え、結果的には捜査等多くの人たちに迷惑をかけることになる。

どちらにしても、今回のテトラからの転落事故は釣人全体の問題として、自分自身の危険予知どのように考えるかをもう一度考え直さなければならない事故であつたように思う。釣れる場所を探して、人より沢山釣りたい気持ちは同じ釣人として分からないでもないが、二度とこのような事故の無いように各人細心の注意を払い安全第一の行動をとることを切に望む者である。自分に厳しい自己責任が何たるかを考え、各人各様安全対策を採って楽しい釣りにしたいものである。